「妥当な仮定で現在の長期金利の水準は説明でき骨太ショックは存在しない」

図1:国債10年金利のマクロ・フェアバリュー
出所:内閣府、日銀、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券

ECB7月理事会プレビュー:9月利上げの可能性を残すタカ派的な現状維持を予想
今回の会合に臨むにあたり、ECBはマクロ経済見通しの公式な更新を行わない。しかし、政策理事会の各メンバーはそれぞれ独自の最新予測を持っており、結果として当社とほぼ同等の情報を有していると考えられる。したがって、7月の利上げは予想しない。仮に追加利上げが100%確実な世界であったとしても(実際にはそうではないが)、緊急利上げのマイナス面(市場へのサプライズ、不必要なボラティリティ)がプラス面(即時の引き締め効果)を上回るだろう。ECBはデータ次第・会合ごとのアプローチという従来の非コミット的な表現を維持する可能性が高く、結局のところ他の市場参加者と同様にエネルギーコモディティ価格次第ということになる。ただし、ECBが利上げサイクルは終了していないと認識していること、そして9月利上げの可能性が残ることが予想される。ECBはタカ派的なバイアスを緩やかに示し、9月利上げに対する市場の期待を概ね追認するだろう。もっとも、現在の市場の織り込み状況を踏まえると、会合間の利上げや50bpの利上げ(いずれも正当化される状況はないと判断している)を除外する以上、市場が現状以上に織り込む余地は見出しにくい。ただし、その先の会合については、12月の期待がやや過度にハト派的だと考える。市場は現在1.6回分の利上げ(41bp)を織り込んでいるが、9月利上げの確認によって12月の織り込みが上方修正される可能性がある。一方、12月2026年以降の追加利上げをECBが行う理由は依然として見出しにくい。12月までには、ホルムズ海峡の状況とユーロ圏経済への影響について十分な情報が得られているはずだ。もしそうでなく、ホルムズ海峡が安定していない場合、それはエネルギー価格が急騰していることを意味する。12月以降の利上げが正当化されうる要因としては、以下の2点が考えられる。・エネルギーコモディティ価格の全体的な動向が、ターミナルレートを3.00%とすることを必要とする場合。・ホルムズ海峡の緊張が今後数週間で緩和され(例えば米中間選挙前など)、ECBが12月会合までに1回のみ利上げを行うにとどまった後、年末または来年初頭に紛争が再燃する場合。それでもなお、最も蓋然性の高いシナリオは、コモディティ価格が現在の先物水準に沿って推移するならば、2026年6月から12月にかけて四半期ごとに利上げを実施するという直線的な経路であり、これが物価安定を確保するために必要かつ十分であると考える。(松本賢)

図2:コールレートのマクロ・フェアーバリュー推計誤差
出所:内閣府、日銀、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券

妥当な仮定で現在の長期金利の水準は説明でき骨太ショックは存在しない

n   政府が重視するファンダメンタルズ対比の推計では、日銀は「ビハインド・ザ・カーブ」(利上げの遅れ)ではなく、逆に「アヘッド・オブ・ザ・カーブ」(拙速な利上げ)となっている。マクロ・フェアバリューとの誤差の幅は、緊縮で知られた三重野・白川総裁と同じように、標準誤差の1.25倍を超えてしまった。

n   長期金利(国債10年金利)のマクロ・フェアバリューは、名目GDP(前年比、12QMA)、企業貯蓄率と財政収支を合わせたネットの資金需要(対GDP比%、マイナスが強い)、日銀の長期国債買入れ額(対GDP比%)、米国債10年金利、緩和的金融政策のコミットメントの強さを表すダミー変数(プラスは緩和に前のめり)で推計できる。

n   高市政権の積極財政の方針によって、ネットの資金需要が正常なマイナスに転じ(-1%)、名目GDP成長率3%が持続するマクロ・ファンダメンタルズを市場が織り込んだと仮定する。そして、日銀の金融政策スタンスの変化を表すダミー変数を「アヘッド・オブ・ザ・カーブ」によりマイナス0.25(マイナスは引き締めに前のめり)、また月間2兆円までの長期国債買い入れ額の減額を織り込んだと仮定する。10年金利のマクロ・フェアバリューは2.7%となり、妥当な仮定で現在の水準が説明でき、「骨太ショック」は存在しないことが示される。

日銀の政策金利(無担保コールレートオーバーナイト物)のマクロ・フェアバリューは、政府が重要視する需給ギャップとネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支、GDP比)が示すファンダメンタルズの状態、そして米国の長期金利で算出できる。公表されている直近の1-3月期の需給ギャップ+0.5%(4QMA)とネットの資金需要+2.6%が示す弱いファンダメンタルズ、4.6%の米国の長期金利を前提とすると、日銀の政策金利のマクロ・フェアバリューは0.15%程度となる。現行の政策金利である1.00%よりかなり低い。

日銀は、「消費者物価の基調的な上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスクがある」ことを利上げの理由としているが、マクロ・ファンダメンタルズでは、そのリスクはほとんどないことが示される。政府が重視するファンダメンタルズ対比の推計では、日銀は「ビハインド・ザ・カーブ」(利上げの遅れ)ではなく、逆に「アヘッド・オブ・ザ・カーブ」(拙速な利上げ)となっている。マクロ・フェアバリューとの誤差の幅は、緊縮で知られた三重野・白川総裁と同じように、標準誤差の1.25倍を超えてしまった。

コールレート(%)=-0.16 -0.13 ネットの資金需要(%GDP、1Qラグ)+ 0.31 需給ギャップ(1Qラグ)+0.11 米国債10年金利; R2=0.85

長期金利(国債10年金利)のマクロ・フェアバリューは、名目GDP(前年比、12QMA)、企業貯蓄率と財政収支を合わせたネットの資金需要(対GDP比%、マイナスが強い)、日銀の長期国債買入れ額(対GDP比%)、米国債10年金利、緩和的金融政策のコミットメントの強さを表すダミー変数(2016年4-6月期から2024年10-12月期まで1、2025年1-3月期から7-9月期まで0.75、他は0とする、プラスは緩和に前のめり)で推計できる。

高市政権の積極財政の方針によって、ネットの資金需要が正常なマイナスに転じ(-1%)、名目GDP成長率3%が持続するマクロ・ファンダメンタルズを市場が織り込んだと仮定する。そして、日銀の金融政策スタンスの変化を表すダミー変数を「アヘッド・オブ・ザ・カーブ」によりマイナス0.25(マイナスは引き締めに前のめり)、また月間2兆円までの長期国債買い入れ額の減額を織り込んだと仮定する。10年金利のマクロ・フェアバリューは2.7%となり、妥当な仮定で現在の水準が説明でき、「骨太ショック」は存在しないことが示される。

長期金利推計式
国債10年金利(%)=0.48+0.30 名目GDP(%、前年比、12QMA)+0.26 米国10年金利(%)-0.15 ネットの資金需要(対GDP比%)-0.06 日銀長期国債買入れ額(年率換算、対GDP比)-0.61 緩和的金融政策ダミー(2016年4-6月期から2024年10-12月期まで1、2025年1-3月期から7-9月期まで0.75、他は0) ;R2=0.93

図3:ECB預金ファシリティ金利の織り込みとCACIB予想
出所:Bloomberg、クレディ・アグリコル証券

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