消費減税の十分な財源があることを示す中長期財政試算

n   高市政権は、日本経済の停滞の原因は、人口動態の宿命ではなく、投資不足の意志の問題だと判断している。城内日本成長戦略担当大臣を中心に、専門家の英知を結集し、官民連携の戦略投資の拡大で、強い経済を実現する意志を示す、グランドデザイン(日本成長戦略)が生まれた。経済政策の総動員で、民間投資をクラウディング・インして、国力を強くする、グローバルな厳しい競争に勝ち残ろうとする。新自由主義の古い考え方で、政府の関与の拡大とクラウディング・アウトを懸念していては、日本は時代の変化に取り残され、競争に劣後し、国力の衰退を招くとの危機意識も強い。


日本成長戦略の下で「強い経済のグランドデザイン」へ
出所:内閣府、クレディ・アグリコル証券

n   日本成長戦略では、2040年度までに17戦略分野の62の主要な製品・技術を中心に、370兆円超の官民合計の投資額が示された。官民の投資額の想定が明確に示されたことは、企業と政府の支出する力である、ネットの資金需要をターゲットとすることが決定されたことになる。ネットの資金需要の拡大で、官民の支出する力を強くし、家計に所得を強く回す。投資需要の拡大で、需給ギャップ2%の「高圧経済」とし、景気を十分に強くすることで、民間の投資の誘発力を強くする。

n   日本成長戦略では、「需給ギャップは0%近傍となったが、景気は十分に強くなく、地方や中小企業まで景気回復の実感はまだ広がっていない」との認識が示された。骨太の方針では、「2%の物価安定目標の実現の下で、できるだけ早期に、実質で1%を上回る、名目で3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げていく」とする高圧経済の方針が示された。設備投資と公共投資の実質GDP比が上昇を続け、国内投資拡大による労働生産性の向上にともなう実質賃金の上昇をともない、企業貯蓄率が低下し、ネットの資金需要が十分なマイナスとなることが、成長戦略の、進捗の尺度となる。

n   これまでの内閣府の中長期の経済財政に関する試算では、財政収支が黒字に向かう中で、ネットの資金需要はプラスの消滅を続け、家計の貯蓄率が上昇せず、家計のファンダメンタルズはしっかり回復できないという「弱い経済のグランドデザイン」であった。日本成長戦略の下では、政府の戦略投資の分、財政収支は赤字となるのは当然だ。ネットの資金需要がマイナスという官民合わせた投資超過によって、家計にしっかり所得を回すことができる、「強い経済のグランドデザイン」を構築する。


義務的歳出(社会保障費と地方交付税交付金)と税収+税外収入
出所:財務省、クレディ・アグリコル証券

n   日本成長戦略と高市政権初の骨太の方針の決定後、新たな中長期経済財政試算では、企業貯蓄率は正常なマイナスの回復に向かい、政府の戦略投資の分の財政赤字とともに、ネットの資金需要も正常なマイナスの回復に向かうことが示された。2040年度までに、企業貯蓄率はマイナス化、ネットの資金需要は-2%程度まで回復する。「弱い経済のグランドデザイン」を脱した。しかし、企業貯蓄率のマイナス化が、成長実現ケース①(全要素生産性5年程度で1.1%まで上昇、その後更に5年程度で1.4%に到達)では2038年度、成長実現ケース②(全要素生産性5年程度で1.1%まで上昇し、その後一定)では2040年度と遅く、その幅も―0.4%・-0.1%と小さいことだ。結果として、家計の貯蓄率は2%程度でまだ横ばいだ。

n   問題は、官が戦略投資を拡大するコミットメントをしたが、企業がしっかり投資拡大でついてくるのか、新興企業が育つのか、まだ不透明であることが示されていることだ。企業がまだコストカット型から投資型への移行が道半ばであるとの意識だろう。企業の投資活動が強くなり、企業貯蓄率のマイナス化が早く進み、その幅も大きくなれば、ネットの資金需要は更に大きなマイナスへ回復し、家計のファンダメンタルズは、現在の消費と将来に向けた貯蓄の両方の拡大ができるまで、回復することができるようになる。「強い経済のグランドデザイン」への転換には、民間の力が必要である。転換がなされれば、「強く豊かな日本」を国民は実感できるようになる。

n   投資が実質賃金の上昇につながり、家計のファンダメンタルズが回復するまでには時間がかかる。その間、消費税率を引き下げ、家計を支えるのは合理的だ。2027年度の税収見込みは90.5兆円となった。消費税の食料品の税率が1%まで引き下げられ、税収が4兆円程度下振れても、2027年度の税収は2026年度の見込みの83.7兆円を上回ることになる。消費税の減税は国債に頼らずできることが明らかとなった。名目GDPが横ばいであった時は、成長による税収増は恒久的な財源とはならなかった。増えれば、また減るリスクが大きかったからだ。しかし、名目GDPが持続的に拡大する局面となった現在、来年の税収は、今年の成長による税収増の上に、更に増加することになる。持続的な名目GDP成長の下では、成長による税収増は恒久的な財源となる。更に、当初予算で財務省が歳入を過小に見積もる癖によって、補正予算まで歳入が7兆円程度も上振れることが常態化している。恒常的支出を補正から当初に回すのであれば、この過小見積もりの癖も正すべきで、その修正は財源と見なすこともできる。税収・税外収入は社会保障費を含む義務的支出を大きく上回っており、消費税の減税が義務的支出の削減につながることはない。

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